電気料金の高騰が続く中、電力契約の見直しを検討されている事業者の方も多いのではないでしょうか。特に近年注目を集めているのが「市場連動型プラン」です。電力市場の価格変動に応じて料金が決まる仕組みのため、従来の固定型の料金プランとは大きく異なります。
本記事では、市場連動型プランの基本的な仕組みから、事業者が導入を検討する際に押さえておきたいメリット・デメリット、さらには実際の選び方までをわかりやすく解説していきます。電力コストの最適化を目指す事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
市場連動型プランとは

電力契約を見直す際によく耳にする市場連動型プランですが、一体どのような仕組みなのでしょうか。
市場連動型プランの基本的な概念
市場連動型プランとは、電力量料金単価が、日本卸電力取引所(JEPX)などの卸電力市場価格に連動して変動する料金プランを指します。
従来の固定料金プランでは、契約時に設定された単価が一定期間変わらないのが一般的でした。一方、市場連動型プランでは、JEPXのスポット市場価格をベースに、30分ごと、または一定期間(例:月平均)で電気料金単価が変動します。
電力市場の価格は、電力の需要と供給のバランスによって決まります。需要が高まる時間帯や季節には価格が上昇し、需要が落ち着く時間帯には価格が下落する傾向があります。まるで株式市場で株価が変動するように、電力にも市場価格が存在するのです。
市場連動型プランが生まれた背景
従来の固定単価プランでは、燃料価格が大幅に上昇しても、契約期間中の電気料金は一定に保たれます。その結果、燃料価格の変動リスクは電力小売事業者が負担する構造となっていました。
近年は、国際情勢の不安定化や化石燃料価格の高騰を背景に、燃料価格の変動が激しくなっています。特に2021年1月には、記録的な寒波やLNG(液化天然ガス)の供給不足などが重なり、電力市場価格が異常な高騰を記録しました。その結果、一部の事業者が大きな損失を被り、事業継続が困難になるケースも発生しました。
こうした状況を受けて普及してきたのが、市場連動型プランです。事業者にとっては価格変動リスクを需要家と分担できる契約形態であり、需要家にとっては市場価格が安定している局面でコスト削減の恩恵を受けられる可能性があることから、双方にとって合理的な選択肢として注目されています。
市場連動型プランの種類

市場連動型プランには、連動の仕方や価格算定方法によっていくつかのタイプがあります。自社の電力使用状況やリスク許容度に応じて、最適なタイプを選ぶことが重要です。
完全なスポット連動型(30分ごとに連動)
JEPXの市場価格に完全に連動し、30分ごとの市場価格がそのまま電気料金単価に反映されるタイプです。価格が安い時間帯には大きなメリットを享受できる一方で、高騰時の影響も直接受けるため、価格変動リスクは最も大きくなります。価格変動リスクを許容でき、電力使用時間帯を柔軟に調整できる事業者に適したプランです。
月平均の市場調整型
一定期間(主に1ヶ月)の市場価格の平均値をもとに電気料金を算定するタイプです。日々の価格変動の影響を受けにくく、月次での予算管理がしやすいという特徴があります。
短期的な変動リスクを抑えつつ、市場動向を中長期的に反映させたい事業者に向いています。
固定単価・市場連動のハイブリッド型
電力使用量の一部を固定料金、残りを市場連動型とするタイプです。基本的な電力使用量は固定料金で安定させ、超過分のみを市場連動とするなど、柔軟な設計が可能です。
変動リスクを一定程度抑えながら、市場価格の流動性を部分的に受け入れることで、リスクを抑えつつコスト最適化を図りたい事業者に適した選択肢です。
電気料金の構成と市場連動の仕組み

一般的な電気料金は、以下の4つで構成されています。
- 基本料金
- 電力量料金
- 燃料費調整額
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金
従来の固定料金プランでは、電力量料金単価が固定され、燃料価格の変動が燃料費調整額として後から加減算される仕組みが一般的です。
一方、市場連動型プランでは、電力量料金単価そのものが市場価格に連動する点が特徴です。ただし、電力量料金単価に市場価格を反映させる設計が一般的である一方で、燃料費調整額の項目を通じて市場価格の変動を反映する料金メニューも存在します。そのため、実際の調整方法や算定項目については、契約前に必ず確認することが重要です。
電力市場価格を左右する要因
電力市場の価格は、様々な要因によって変動します。主な要因として以下が挙げられます。
- 天候条件(太陽光・風力発電の出力変動)
- 時間帯による需要の違い
- 季節(夏季・冬季の冷暖房需要)
- 発電設備のメンテナンス状況
- 災害による設備トラブル
- 平日・休日の需要差
- 国際情勢や燃料価格の動向
こうした要因が複雑に絡み合い、電力市場価格は30分単位で変動します。
市場連動型プランのメリット
市場連動型プランには、事業者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。料金面での利点を中心に見ていきましょう。
電力コストを抑えられる可能性がある
市場連動型プランの最大のメリットは、市場価格が安定している局面であれば、従来の固定料金プランよりも電力コストを抑えられる可能性があることです。
特に、電力需要が少ない時間帯や季節には市場価格が低下する傾向にあります。深夜や早朝、また春や秋といった冷暖房需要が落ち着く時期は、電力価格が比較的安価になりやすいです。このような時間帯に電力使用が集中する事業形態であれば、大幅なコスト削減が期待できます。
料金体系がシンプルでわかりやすい
市場価格が直接反映されるため、料金構造が比較的シンプルです。電力コストの内訳を把握しやすく、経営判断に活用しやすい点もメリットと言えます。
電力使用の最適化を促進できる
多くの電力会社では、翌日の市場価格をアプリやウェブサイトで事前に確認できるサービスを提供しています。これにより、価格が安い時間帯に合わせて電力使用を調整する、高い時間帯は使用を控えるといった運用が可能になります。
事業所全体の省エネ意識が高まり電力使用の最適化が促進されやすいというのも、市場連動型プランのメリットの1つです。
市場連動型プランのデメリット
メリットがある一方で、市場連動型プランには注意すべきデメリットも存在します。導入前にしっかりと理解しておくことが重要です。
電気料金が高騰するリスクがある
市場連動型プランの最大のリスクは、電力市場の価格が急騰した際に、電気料金が大幅に上昇する可能性があることです。
実際に、2020年12月から2021年1月にかけて、記録的な寒波により電力需要が急増。さらにLNG(液化天然ガス)の供給不足や石炭火力発電所のトラブルなどが重なった結果、市場価格が1日平均154.6円/kWh、最高価格は251円/kWhに達しました。通常時と比較すると、約10倍以上の水準にまで高騰したケースです。
こうした事態が発生すると、予期せぬコスト増加が企業に大きな負担をもたらします。特に電力使用量が多い事業所では、その影響は深刻です。
毎月の電気代を予測しにくい
市場連動型プランは、天候や季節、需要の増減によって日々変化する電力市場価格と連動し、同じ電力使用量でも毎月の電気料金は変わってきます。
予算管理や資金計画が立てにくくなるというのは、大きなデメリットだと言えるでしょう。経営上の不確実性が増すため、企業や自治体には慎重な判断が求められます。
契約内容が複雑になる場合がある
価格変動のリスクを軽減するため、上限価格や下限価格といった複雑な条件が伴う場合があります。契約内容を十分に理解しないまま導入すると、想定外のコストが発生する可能性があります。
契約前には、料金の算定方法や条件を詳細に確認し、必要であれば専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
市場連動型プランが向いている事業者

では、どのような事業者が市場連動型プランに適しているのでしょうか。具体的な特徴を見ていきます。
市場価格が安い時間帯に電力使用が集中する事業者
電力の使用が、市場価格が比較的安価に推移する時間帯に集中している場合、市場連動型プランは有力な選択肢となります。
例えば、深夜や早朝に電力使用量が多い事業者や、平日昼間よりも土日・祝日の使用比率が高い施設では、市場価格が安い時間帯の電力利用割合が高くなる傾向があります。また、太陽光発電の出力増加により市場価格が低下しやすい日中に電力使用量が多い事業者も、市場連動型プランの特性を相対的に活かしやすいと言えるでしょう。
電力市場の動向を継続的にモニタリングできる事業者
市場連動型プランを効果的に運用するためには、電力市場の動向を継続的に把握し、自社の電力使用状況と照らし合わせながら判断していくことが求められます。
専任の担当者を配置できる、あるいはエネルギー管理ツール等を活用して市場価格を定期的に確認できる体制を整えられる事業者であれば、市場連動型プランのメリットを引き出しやすいでしょう。
一方で、こうした体制の構築が難しい場合には、運用負荷や管理コストが相対的に高まる点に留意が必要です。
市場連動型プランの選び方

市場連動型プランを検討する際には、価格水準だけでなく、リスクの取り方や運用体制まで含めて総合的に判断することが重要です。ここでは、選定時に押さえておきたい主なポイントを整理します。
自社の電力使用状況を詳細に把握する
まず重要なのは、自社の電力使用状況を客観的に把握することです。
月間の電力使用量だけでなく、時間帯ごとの使用パターン、季節による変動、最大需要電力(ピーク)の発生状況などを確認しましょう。過去1年分のデータを分析することで、市場連動型プランに切り替えた場合の影響を一定程度シミュレーションすることが可能になります。
電力使用が特定の時間帯に集中している場合や、使用量の予測が立てやすい事業形態であれば、市場連動型プランの導入効果を見積もりやすくなります。
複数のプランを比較検討する
市場連動型プランと一口に言っても、料金の算定方法やリスクの考え方は電力会社によって異なります。
- 完全なスポット連動型(30分ごとに連動)
- 月平均の市場調整型(一定期間の平均値をもとに算定)
- 固定単価・市場連動のハイブリッド型
前半で紹介した上記3つのように、リスク許容度に応じた様々な選択肢があります。自社のコスト削減目標とリスク許容度を踏まえて、最適なプランを選ぶことが重要です。
あわせて、契約期間や更新条件、解約金の有無なども確認しておきましょう。市場環境が変化した際に柔軟にプランを変更できるかどうかも、重要な判断基準となります。
情報提供体制が整った電力会社を選ぶ
市場連動型プランでは、価格動向に関する情報をどれだけ把握できるかが運用面での負担に直結します。
一部の電力会社では、市場動向の分析レポートを定期的に発行したり、翌日の価格予測をアプリで確認できるサービスを提供したりしています。こうした情報提供を積極的に行う電力会社を選ぶことで、柔軟な電力使用の調整がしやすくなり、コスト削減につながります。
また、トラブル発生時の対応や問い合わせへの迅速な対応など、サポート体制の充実度も確認しておきましょう。
市場連動型プランを導入する際の注意点
実際に市場連動型プランを導入する際には、価格変動リスクを前提とした運用体制を整えておくことが重要です。リスクを最小限に抑えるためのポイントを押さえておきましょう。
価格高騰時の対応策を事前に検討しておく
市場価格が急激に上昇した場合に備えて、事前に対応策を準備しておくことが重要です。
例えば、市場価格が一定水準を超えた場合に電力使用を抑制する運用ルールを設ける、あるいは想定外のコスト増加に備えて予備費を確保しておく、といった対策が考えられます。また、上限価格が設定されているプランを選ぶことで、価格高騰時の影響を一定範囲内に抑えることも可能です。
あわせて、市場環境が大きく変化した場合に、他のプランへの切り替えを検討できる体制を整えておくことも大切です。
定期的に契約内容を見直す
電力市場の状況は常に変化します。そのため、市場連動型プランを導入した後も、定期的に契約内容を見直すことが重要です。
事業内容や稼働状況の変化、市場環境の大きな変動があった場合には、プランの見直しや電力会社の変更を検討する余地があります。少なくとも年に1回程度は、現在のプランが自社の状況に適しているかを確認する機会を設けることをおすすめします。
省エネ対策と併せて取り組む
市場連動型プランの導入だけでなく、省エネ対策を並行して進めることで、さらなるコスト削減が期待できます。
LED照明への更新や空調設備の適切な運用、建物の断熱性能向上など、電力使用量そのものを削減する取り組みを行いましょう。電力使用量が減れば、市場価格が高騰した際の影響も抑えられます。
自社に最適な電力契約を選択しよう

市場連動型プランは、電力市場の価格変動を前提とした契約形態であり、使い方次第では電力コストの最適化につながる可能性があります。特に、電力使用の時間帯に一定の柔軟性がある事業者や、市場価格が比較的低い時間帯に電力使用が集中する事業者にとっては、有効な選択肢となり得ます。
一方で、市場価格が急激に変動するリスクや、月々の電気料金を事前に見通しにくいといった側面も踏まえる必要があります。そのため、導入にあたっては、自社の電力使用特性を把握したうえで、どの程度の価格変動を受け入れられるかを慎重に検討することが重要です。
電力コストは、事業運営における重要な経費の1つです。市場連動型プランの特性やリスクを十分に理解したうえで、自社の事業内容や運用体制に適した電力契約を選択し、安定的かつ持続的な経営につなげていきましょう。










