毎月の電気料金明細を確認する際、「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」という項目が記載されていることにお気づきでしょうか。
再エネ賦課金の負担額は、電力使用量が多いほど大きくなる仕組みであるため、企業や自治体にとって、その負担額は決して小さくありません。本記事では、再エネ賦課金の仕組み、今後の見通しや負担軽減策など、実務に役立つ観点からわかりやすく解説します。
再エネ賦課金とは何か

電気料金の内訳を見ると、基本料金や電力量料金に加えて、再エネ賦課金という項目が含まれています。再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーの普及を国民全体で支えるための財源として導入された制度です。
再生可能エネルギー普及を支える制度
再エネ賦課金は、2012年7月に導入された固定価格買取制度(FIT制度)を支える仕組みとして誕生しました。
FIT制度では、再エネ事業者が発電した電力を国が定めた価格で電力会社が買い取ることが保証されます。その費用の一部を、全国の需要家が再エネ賦課金として負担します。
経済産業省のエネルギー白書2025によると、日本のエネルギー自給率は約15%と世界的に見ても低く、化石燃料の大部分を海外からの輸入に依存しているのが現状です。
再エネ賦課金は、こうしたエネルギー安全保障上の課題を解決し、環境負荷の少ない持続可能なエネルギー社会を実現するための財源として位置づけられています。
全国一律で電気使用量に応じて課される
再エネ賦課金には次のような特徴があります。
- 電気を使用するすべての事業者・家庭が対象となる
- 全国一律の単価が適用される
- 電力使用量に比例して負担額が増える
- 自家消費した電力(太陽光発電など)には課されない
つまり、電力会社から購入する電力量が多い事業者ほど、再エネ賦課金の負担額も大きくなる構造です。製造業や物流業といった電力使用量の多い業種では、年間で数百万円から数千万円規模の負担になるケースも珍しくありません。
固定価格買取制度(FIT制度)の役割

再エネ賦課金を理解する上で欠かせないのが、FIT制度です。この制度が再生可能エネルギーの普及にどのような役割を果たしているのかを紹介します。
再生可能エネルギー事業者の投資回収を保証
FIT制度とは、再エネ発電事業者が発電した電気を、電力会社が一定期間・固定価格で買い取ることを国が保証する制度です。
この制度により、事業者は長期間にわたって安定した収入を見込めるようになります。設備投資の回収見通しが立ちやすくなることで再生可能エネルギー事業への参入障壁が下がり、全国各地で再エネ設備の導入が進みました。
FIT制度の対象となる再生可能エネルギーは、以下の5種類です。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 水力発電(中小水力)
- 地熱発電
- バイオマス発電
発電方法によって買取価格や買取期間が異なり、住宅用太陽光発電(10kW未満)は10年間、産業用太陽光発電(10kW以上)は20年間といった具合に設定されています。
再エネ賦課金は「FIT費用の差額」を負担する制度
FIT制度による買い取り費用は、電力の市場価格よりも高めに設定されていることが一般的です。そのため、電力会社は買い取りにより追加負担が生じます。この差額を埋めるために、再エネ賦課金が需要家から徴収されます。
再エネ賦課金の単価が決まる仕組み(FIT差額構造)
再エネ賦課金の単価は「FIT買取費用」と「回避可能費用(市場価格相当分)」の差額で決まります。
単価の算定式
再エネ賦課金単価 =(FIT買取費用総額 − 回避可能費用)÷ 全国の電力使用量
- FIT買取費用総額:FIT価格×FIT電源の発電量
- 回避可能費用:市場(JEPX)で調達したと仮定した場合の費用
→差額:全国の需要家が負担する部分
なぜ単価が上下するのか?
賦課金単価の変動は、主に次の2つの動きで説明できます。
FIT買取費用が高いほど単価は上がりやすい
2012〜2014年に導入された高額FIT(40円/kWh超)が現在も残っており、買取費用は大きい状態が続いています。
市場価格が高いと単価は下がる(逆の動きが起きる理由)
市場価格が上昇すると、電力会社が市場で調達した場合の費用(=回避可能費用)が増えます。するとFITとの価格差が縮まり、賦課金単価は下がるという逆相関が生まれます。
例えば2023年度に単価が1.40円/kWhまで下がったのは、燃料価格高騰による市場価格の上昇で回避可能費用が増えたためです。
再エネ賦課金の資金フロー(制度の全体像)
再エネ賦課金の流れは次のように整理できます。
- 再生可能エネルギーの発電事業者が太陽光や風力などで電力を発電する
- 電力会社が固定価格で再生可能エネルギー電力を買い取る
- 電力会社は送配電ネットワークを通じて需要家に電力を供給する
- 需要家は電気料金の一部として再エネ賦課金を電力会社に支払う
- 電力会社は集めた再エネ賦課金を国の指定機関に納付する
- 国の指定機関が電力会社に再エネ買取費用を交付する
再エネ賦課金は電力を使用するすべての人が負担し、その資金が再生可能エネルギーの普及を支える構造になっています。
再エネ賦課金の計算方法と負担額の目安

事業運営において電力コストを管理する上で、再エネ賦課金がどのように計算されるのかを把握しておくことは非常に重要です。
電力使用量に単価を掛けて算出
再エネ賦課金の金額は、「電力使用量(kWh)×再エネ賦課金単価(円/kWh)」という非常にシンプルな計算式で求めることが可能です。
例えば、再エネ賦課金単価が3.98円/kWhだった2025年度の月間電力使用量が10万kWhの事業所の場合、1ヶ月あたりの再エネ賦課金は次のように計算されます。
- 計算例:10万(kWh) × 3.98(円/kWh) = 39万8,000円
年間に換算すると、39万8,000(円) × 12(ヶ月) = 477万6,000円もの負担となります。
電気料金全体の構成は、基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再エネ賦課金となっており、再エネ賦課金は電気料金の中でも決して小さくない割合を占めています。
再エネ賦課金の推移と今後の見通し
再エネ賦課金の単価は固定ではなく、経済産業大臣によって毎年度見直されます。制度開始の2012年度(0.22円/kWh)以降、単価は上昇基調が続いており、2025年度には3.98円/kWhと約18倍にまで増加しました。
| 年度 | 再エネ賦課金単価 |
| 2020年度 | 2.98円/kWh |
|---|---|
| 2021年度 | 3.36円/kWh |
| 2022年度 | 3.45円/kWh |
| 2023年度 | 1.40円/kWh |
| 2024年度 | 3.49円/kWh |
| 2025年度 | 3.98円/kWh |
2030年前後に負担が緩和する可能性
FITの買取期間は10年または20年で、多くの高額FIT電源(2012〜2014年導入)が2030年前後に買取期間の満了を迎えます。満了後は買取費用が減少するため、賦課金単価の低下要因になります。
一方で、
- FIP制度※による新規再エネの拡大
- 系統整備や調整力確保のコスト
- 市場価格の変動
※FIP制度:再エネ発電事業者へ、電力市場で売電した収入に加えてプレミアム(補助額)を上乗せして交付することで、再エネの自立化と電力市場への統合を促す支援制度
など、単価を押し上げる要因も並存するため、再エネ賦課金の将来は複合的に変化していきます。
事業規模別の負担額シミュレーション
事業規模によって電力使用量は大きく異なりますが、参考として事業規模別に再エネ賦課金の負担額をシミュレーションしてみましょう。
| 事業規模 | 月間電力使用量 | 月間負担額(2025年度) | 年間負担額(2025年度) |
| 小規模店舗・オフィス | 3,000kWh | 11,940円 | 143,280円 |
|---|---|---|---|
| 中規模店舗・工場 | 100,000kWh | 398,000円 | 4,776,000円 |
| 大規模工場・物流拠点 | 1,000,000kWh | 3,980,000円 | 47,760,000円 |
このように、電力使用量が多い事業者ほど、再エネ賦課金の負担も比例して大きくなります。電力コストの削減を考える際には、再エネ賦課金も含めた総合的な検討が必要です。
再エネ賦課金の減免制度

電力使用量が多い事業者にとって、再エネ賦課金は大きな負担となります。しかし、一定の条件を満たす事業者は、再エネ賦課金の減免制度を活用することができます。
電力多消費事業者向けの減免措置
年間の電力使用量が極めて多く、かつ省エネルギーへの取り組みが一定水準を満たしている事業については、再エネ賦課金の減免措置を受けられる制度が設けられています。対象となる「申請事業」は、次の要件を満たす必要があります。
- 年間の電力使用量が100万kWh以上であること
※事業所全体ではなく、減免を申請する「申請事業」が対象となります。また、申請事業の電力使用量が、事業所全体の電力使用量の過半(50%超)を占めていることが求められます。 - 電力多消費性(エネルギー原単位)に関する基準を満たしていること
※売上高(千円)あたりの電気使用量(kWh)で示される「エネルギー原単位」が、業種ごとに定められた基準値を超えている必要があります。 - 省エネルギーへの取り組みが一定の水準以上であること
※省エネ計画の策定や原単位改善、省エネ設備の導入など、継続的な改善が求められます。
これらの基準を満たし認定を受けた申請事業は、通常の賦課金単価から最大8割(80%)の減免を受けることができます。特に電力需要の大きい製造業では、賦課金負担を大幅に軽減できる可能性があります。
申請手続きと注意点
減免制度を利用するには、所定の様式に必要事項を記入し、経済産業省(資源エネルギー庁)へ申請する必要があります。申請にあたっては、電力使用実績や省エネルギー計画など、複数の資料が必要となるため、事前に十分な準備期間を確保することが重要です。
認定を受けた後も毎年度の実績報告が義務付けられており、省エネルギーへの継続的な取り組みが求められます。基準を満たせなくなった場合は、翌年度の減免が取り消される可能性もあるため注意が必要です。
再エネ賦課金の負担を抑える方法

再エネ賦課金は電力使用量に比例するため、電力使用量そのものを削減することが最も効果的な負担軽減策となります。
省エネルギー設備の導入
照明のLED化や空調設備の更新、生産設備の効率化など、省エネルギー設備への投資は、電力使用量の削減につながります。
こうした初期投資には決して少なくない費用が発生しますが、再エネ賦課金を含めた電気料金全体の削減効果により、中長期的には投資回収が見込めるケースが多いです。
国や自治体が提供する省エネ設備導入のための補助金制度を活用すれば、初期投資の負担を軽減することも可能です。
太陽光発電の自家消費
事業所の屋根や敷地に太陽光発電設備を導入し、発電した電力を自社で消費すれば、電力会社からの購入電力を削減できます。自家消費した電力には再エネ賦課金がかからないため、電気料金の削減効果が高まります。
太陽光発電設備の導入にあたっては初期投資が課題となりますが、近年はPPA(Power Purchase Agreement)と呼ばれる第三者所有モデルも普及しています。これは、初期投資なしで太陽光発電を導入でき、発電した電力を使用した分だけ料金を支払う仕組みです。
電力契約プランの見直し
電力小売の全面自由化により、2016年4月以降は家庭・法人を問わず、誰でも電力会社を選べるようになりました。様々なプランを見て基本料金や電力量料金の単価を比較検討することで、再エネ賦課金を含めた電気料金全体の最適化が可能となっています。
中には、時間帯別料金プランや季節別料金プランなど、使用時間帯を工夫することで電力コストを削減できるプランもあります。自社の電力使用パターンを分析し、最適なプランを選択しましょう。
再エネ賦課金に関するよくある質問
再エネ賦課金に関するよくある質問に回答します。
Q:再エネ賦課金は全国一律ですか?
A:はい、再エネ賦課金の単価は全国一律です。地域や電力会社による差はなく、すべての需要家に同じ単価が適用されます。ただし、電力使用量に応じて負担額は異なります。
Q:太陽光発電を導入している場合も再エネ賦課金は課されますか?
A:太陽光発電で発電した電力を自家消費する分には、再エネ賦課金は課されません。ただし、電力会社から購入する電力には通常通り再エネ賦課金が課されます。
Q:再エネ賦課金の減免制度はどのような事業者が対象ですか?
A:年間電力使用量が100万kWh以上で、かつ事業所全体の電力使用量の過半を占める「申請事業」であることが要件となります。また、売上高あたりの電気使用量(エネルギー原単位)が国の基準を超えていること、省エネルギーへの取り組みが一定水準以上であることも必要です。主に電力多消費型の製造業を中心に適用事例があります。
Q:再エネ賦課金はいつまで続きますか?
A:現時点で終了時期は明示されていません。固定価格買取制度(FIT制度)が続く限り、再エネ賦課金も必要と考えられます。ただし、2030年代にかけて高額FIT電源の買取期間が順次満了するため、負担が緩和する可能性があります。
Q:再エネ賦課金を支払わない方法はありますか?
A:電力会社から電力を購入する限り、再エネ賦課金を支払わない方法はありません。ただし、自家消費型太陽光の導入や、減免制度を活用することで負担を軽減することは可能です。
再エネ賦課金の仕組みを理解しよう

再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの普及を国民全体で支えるための重要な制度です。事業者にとっては電力コストの一部として無視できない負担となっていますが、制度の仕組みを正しく理解した上で、適切な対策を行うようにしましょう。









