企業の経営や自治体の運営において、電気料金は削減が難しい重要な固定費の1つです。
近年は電力市場が不安定化しており、電気料金の値上げが相次いでいます。国際的な燃料価格の高止まり、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の増額、国内供給力の不足など複数の要因が重なり、電気料金は以前よりも構造的に上昇しやすい環境にあります。
本記事では、電気料金が上昇している背景や最新動向を整理しつつ、今後の見通し、そして企業・自治体が取り組むべき実践的なコスト対策を分かりやすく解説します。電気料金に悩んでいる事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
※本記事の内容は2025年12月時点の情報に基づき作成しています。最新の電気料金や制度の詳細は、各電力会社や経済産業省の公式サイトをご確認ください。
電気代の値上げの最新状況

ここでは、2025年現在の電気料金の最新状況について整理します。
2025年の電気料金動向
低圧契約(家庭・小規模店舗)では、国による電気・ガス料金の負担軽減策が時限的に実施されており、2025年7〜9月の夏季対策や、2026年1〜3月の冬季支援など、補助の有無によって月々の電気料金が変動しやすい状況が続いています。特に補助がない期間は単価が押し上げられるため、料金の上昇が目立ちやすくなっています。
一方、高圧・特別高圧では、こうした支援措置が電気料金全体に与える影響は相対的に小さく、国際的な燃料価格の動きや為替レートに応じて変動する「燃料費調整額」の方が月々の料金を左右しやすい点が特徴です。
さらに、市場価格(JEPX)をどの程度調達に織り込むかも事業者によって異なるため、同じエリア・同じ使用量であっても、契約する小売電気事業者によって電気料金の水準が変わるケースが多く見られます。
再生可能エネルギー発電促進賦課金とその他のコスト要因
電気料金の値上げ要因として見逃せないのが、「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」の増額です。2025年5月から、この賦課金は1kWhあたり3.49円から3.98円に引き上げられました。
再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーを電力会社が買い取る費用を、電気利用者全体で負担する仕組みのことです。2012年の制度開始時は0.22円/kWh程度でしたが、太陽光・風力発電の導入拡大に伴い、事業者にとっても無視できない水準にまで上昇しています。今後も再エネ導入が進む限り、賦課金は中長期的に上昇する可能性が高いと考えられます。
使用量の多い事業者ほど影響は大きく、例えば月間50,000kWhを消費する企業の場合、年間に支払う賦課金は以下のようになります。
50,000(kWh)×12(ヶ月)×3.98(円/kWh)=2,388,000(円)
このほか、事業者・自治体の電気料金は以下のような様々な要素が積み重なって上昇する可能性があります。
- 容量拠出金(電力を安定供給するための負担金)の再上昇リスク
- 送電線の利用料(託送料金)の上昇リスク
- 環境対策に関連するコストの増大
したがって、料金明細の内訳レベルでコスト構造を把握し、中長期的な視点で対策を講じることが重要です。
電気代の値上げの主な要因

電気料金の上昇は、一時的な要因ではなく、国際情勢や国内のエネルギー供給構造の変化が重なった結果として生じています。法人や自治体がコストを戦略的に管理するためには、短期・中期・長期で異なる要因を理解することが重要です。
短期変動要因(数ヶ月〜1年)
短期的に電気料金を左右するのは、主に国際燃料価格の高止まりと円安の進行です。原油・LNG・石炭といった火力発電の燃料価格が高い水準で推移していることが「燃料費調整額」を押し上げ、円安によって燃料輸入コストが増加することで発電コストが上乗せされます。
加えて、補助金の適用状況や需給逼迫による市場価格(スポット価格)の急騰など、短期的な外部要因によっても電気料金が変動しやすく、月ごとの単価に大きく影響します。
中期構造要因(半年〜数年)
中期的には、国内の電源構成の変化が電力市場価格(JEPX)の不安定化につながっています。原子力発電所の停止が長期化し、老朽火力の休廃止が進んだことで供給力に余裕がなく、猛暑・厳冬といった需要が高まる時期には市場価格が跳ねやすい状況が続いています。また、太陽光など再生可能エネルギーの出力変動が増加していることも、市場価格の振れ幅を大きくする要因となっています。
さらに、小売電気事業者の市場連動型の調達比率が高まっており、市場価格の上昇が小売料金に反映されやすい構造に変化しています。こうした環境では、契約メニューの選定や使用パターンに応じた見直しがコスト管理の重要なポイントになります。
長期制度要因(複数年〜2030年以降)
長期的には、国のエネルギー政策や環境規制の強化に伴い、電気料金の基礎的なコストが少しずつ積み上がると予想されています。再生可能エネルギー発電促進賦課金は2030年頃まで増加が見込まれており、事業者・自治体の負担は中長期的に高まる可能性があります。
また、再エネ比率の拡大に伴う送配電網の増強(託送料金)、将来の供給力を確保するための容量拠出金、非化石証書など環境価値に関わるコストも拡大傾向にあります。こうした制度的コストは短期的に目立ちにくいものの、長期的には電気料金の上昇要因として累積的に効いてきます。
今後の電気代はどうなる?

電気料金の将来を考えるうえでは、短期・中期・長期の3つの時間軸で整理することが有効です。各種統計や制度動向を踏まえると、電気料金が急速に低下する見通しは乏しく、当面は「高止まり」または「緩やかな上昇」を前提とするのが現実的といえます。
短期的な見通し(〜1年):ピークアウト後の高止まり
短期的な電気料金は、主に燃料価格と為替の動きに左右されます。原油・LNG・石炭といった火力発電の燃料価格は、2022年の急騰期ほどではないものの依然として高値圏にあり、コロナ前の水準までは戻っていません。この「ピークアウト後の高止まり」が続く限り、燃料費調整額も高水準で推移しやすくなります。
また、円安が進行すれば燃料の輸入コストが増加し、発電コストが上乗せされるため、電気料金の低下要因は限定的です。さらに、燃料油価格・電気料金の負担軽減措置は時期によって強弱があり、補助が縮小・停止される局面では実質的な「再値上げ」が生じる点にも注意が必要です。
2025年9月には補助がいったん停止されたことで、電気料金が実質的に上昇したケースも見られ、短期ではこうした政策要因による変動リスクが継続すると考えられます。
中長期的な見通し(~数年):供給力制約と市場価格の不安定さ
中長期的には、電力市場価格(JEPX)の不安定さと国内の供給力制約が、電気料金の高止まりをもたらす主要な要因になります。市場価格は燃料価格だけでなく、国内の電源構成の変化にも影響を受けており、特に以下のような電源側の構造的な課題が、市場価格を押し上げやすい環境を作り出しています。
- 原子力発電所の再稼働の遅れ
- 老朽火力発電所の休廃止
- 太陽光・風力の出力変動の増大
こうした電源側の状況に加え、猛暑や厳冬によって電力需要のピークが長期化することも、市場価格の不安定要因となります。2025〜2026年度は東京エリアを中心に予備率が低下する見通しで、供給余力が小さい状態では市場価格が跳ね上がりやすく、電気料金にも影響が及びます。
また、小売電気事業者は大手・新電力を問わず市場調達比率が高まりつつあるため、市場価格の変動が高圧・特別高圧の料金に反映されやすい構造になっています。こうした状況を踏まえると、中期的には市場価格の不安定さが事業者・自治体の電力コストに直接的なリスクとして作用し続けると考えるのが妥当です。
長期的な見通し(~2030年頃):制度コストの積み上がりによる構造的上昇
2030年頃に向けては、国のエネルギー政策や脱炭素化の進展に伴い、制度に基づく各種コストが累積的に上昇していくと見込まれます。再生可能エネルギー発電促進賦課金は再エネ導入拡大の財源として増額傾向が続いており、今後も一定の上昇リスクがあります。
加えて、脱炭素化を背景とした環境価値の確保や、将来の供給力確保・送配電網の強化に関連する制度コストも、電気料金に少しずつ積み上がる構造が形成されています。これらは短期間で急激に上昇するものではありませんが、複数年をかけて着実に影響を与える点が特徴です。
以下に、長期的な電気料金の上昇要因となりうる主な制度コストを整理します。
| 非化石証書コスト | 再生可能エネルギー由来の「CO₂をほとんど出さない電気」を使っていることを証明する非化石証書の購入費用。 |
|---|---|
| 容量拠出金 | 将来の電力供給力を安定的に確保するために、発電事業者が発電所を維持するコストを小売電気事業者が負担する。最終的には電気料金に上乗せされる。 |
| 託送料金 | 発電所から法人や自治体まで電気を送る送配電網の利用料。再エネ増加に対応した送電網増強のための投資が増えると高くなっていく。 |
これらの制度コストはいずれも、電力供給の安定確保や脱炭素化に必要な費用として位置づけられているものですが、結果として事業者・自治体の電気料金に少しずつ積み上がっていく要因となります。そのため、長期的に見れば「急激ではないものの、じわじわと上昇する電気料金」を前提とした予算管理や対策が求められます。
事業者として押さえておきたい前提と実務への示唆
以上のような短期〜長期の複数要因を踏まえると、企業や自治体は2020年以前の単価を前提にした予算設計を行うことは避けるべきです。燃料価格・為替・市場価格の変動が年間を通じて料金に影響する前提で、一定のリスク幅を見込んだ計画が必要になります。
また、再エネ賦課金・容量拠出金・非化石証書・託送料金といった制度コストの上昇要因を考慮すると、「現在の総合単価が長期的に維持される」と想定するのは安全ではありません。
重要なのは、電気料金の絶対水準を正確に予測することではなく、自社が許容できる変動リスクを定め、契約の見直し、設備投資、再生可能エネルギーの導入など、複数の手段を組み合わせてコストをコントロールする戦略を構築することです。
企業・自治体が取り組むべき実践的な電気代対策

電気料金の変動は避けられませんが、企業・自治体が主体的にコントロールできる領域も数多くあります。ここでは、難しい専門知識がなくても理解しやすい形で、実際に効果の出やすい対策をまとめます。
- 電力契約の見直し
- 使用状況の「見える化」
- 省エネに繋がる小さな改善
- 中長期のコスト削減に繋がる設備更新
- 再生可能エネルギーの活用
電力契約の見直し
電気料金削減で最も即効性が高いのが、電力会社の選定と契約プランの見直しです。電気そのものの品質はどの会社でも変わりませんが、調達方法や市場依存度の違いによって料金単価は大きく異なります。
複数の小売電気事業者から見積もりを取得し、固定単価・市場連動単価・ハイブリッド型など、自社の使用パターンに最も適した契約形態を比較検討することが、設備投資よりも早く確実に効果を出す方法です。
使用状況の「見える化」
電気料金は「いつ、どの時間帯に、どれだけ電力を使ったか」で変動するため、ムダを見つけるには「見える化」が必要です。
見える化によって、夏冬のピーク時間帯の集中や、夜間・休日の不要な設備稼働が特定できます。ピーク抑制は基本料金の削減につながり、市場高騰時間帯の使用削減は電力量料金を抑える効果があります。大きな設備投資を行う前に、まず運用面の改善余地を把握するための重要なステップです。
省エネに繋がる小さな改善
見える化でムダが特定できたら、日々の運用改善だけでも一定の削減効果が見込めます。特に以下は費用をかけずに取り組める効果的な施策です。
- 空調温度の適正化(1℃調整するだけでも数%の削減効果が期待できます)
- 不要な照明・設備の運転時間の見直し
- 市場価格の高い時間帯を避けた稼働時間の調整
こうした取り組みは、短期間で成果が見えるため、全社的な省エネ意識の醸成にもつながります。
中長期のコスト削減に繋がる設備更新
運用改善だけでは限界があるため、中長期視点では省エネ性能の高い設備への更新が有効です。具体的には、以下のような優先順位で検討していくのが良いでしょう。
- 投資回収が早い照明のLED化
- 電力消費の大半を占める空調設備の更新
- 製造業・飲食業等における高効率機器への更新
特に空調は、企業・自治体を問わず電力使用の最大要因であるため、設備更新による削減効果が大きい分野です。
再生可能エネルギーの活用
再生可能エネルギーの導入は、脱炭素経営だけでなく、電気料金の安定化にも大きく寄与します。日中の時間帯に自家発電した電力を利用できるため、市場価格高騰時のリスクヘッジとして機能します。
導入形態は大きく2つに整理できます。
| 投資型(自家消費型太陽光の自社所有) | 電気料金の削減効果が大きく、長期的には最も費用対効果が高い選択肢。 |
|---|---|
| PPA型(初期費用ゼロで導入) | 第三者が設備を設置し、利用者は発電された電気の使用分だけを料金として支払う仕組み。自社で初期費用を負担する必要がないため、資金負担を抑えつつ電気料金の安定化を図ることができ、自治体や中小企業でも導入が進んでいる。 |
また、蓄電池と組み合わせることで、ピークカットやBCP対策にもつながります。
電気代の高騰には戦略的な対応を
電気料金の上昇は、再エネ賦課金の増加、燃料価格や為替の動向、さらには市場構造や制度コストといった複数の要因が重なって生じています。これらは短期間で解消される性質のものではなく、今後も中長期的に電気料金が高止まりする可能性が高いと考えられます。したがって、企業や自治体には、価格変動を前提とした早めの対策が求められます。
まずは、自社・自団体として許容できる変動リスクの幅を明確にしたうえで、電力契約の見直しや、運用改善、省エネ設備への更新など、実行可能な対策から着実に取り組むことが重要です。これらの取り組みは電気料金の抑制にとどまらず、将来的な予算の安定化や、脱炭素経営の推進といった観点からも大きな価値を生みます。
電気料金の最適化は、コスト削減策であると同時に、経営基盤を強化する手段でもあります。本記事が、貴組織にとって最適な電力利用の在り方を見直す一助となれば幸いです。










