電気料金の高騰が続く中、政府は家庭や事業者の負担を軽減するため、継続的に補助金制度を実施してきました。

直近では、冷暖房需要が増える夏場の措置として、2025年7月〜9月使用分(8月〜10月検針分)に「電気・ガス料金支援」が行われましたが、同年9月分をもって一度終了しました。その後、2025年11月に支援の再開が発表され、2026年1月からは3ヶ月間に限定した再支援が開始されています。

しかし、こうした補助金による下支えはあくまで一時的なものです。事業者にとって電力コストの増加は避けられない課題であり、補助金の有無に左右されない「恒久的なコスト削減策」の検討が急務となっています。

本記事では、これまでの補助金制度の仕組みや実施状況を振り返るとともに、事業者が今後取り組むべき電力コスト対策について詳しく解説します。

電気代の補助金制度の基本的な仕組み

電気料金の補助金は、国際的な燃料価格高騰や円安の影響により電気料金が急上昇する中、国民生活や企業活動を支えるために政府が実施してきた経済対策です。一般家庭だけでなく、事業者も支援の対象となっています。

本制度の仕組みは、国が電力会社へ補助金を交付し、その分を各利用者の電気料金から直接値引きするものです。利用者側の申請手続きは不要で、毎月の請求額から自動的に補助金分が差し引かれる形で恩恵を受けられます。

補助金の対象と適用範囲

電気料金の補助金は、低圧契約の一般家庭や小規模事業者から、高圧契約の中規模事業者まで幅広い対象をカバーしています。ただし、特別高圧契約については制度ごとに扱いが異なり、対象外とされるケースが多いため、大規模工場などでは補助金支援を受けられない場合があります。

値引き単価は契約形態(低圧/高圧)と対象期間で決まり、値引き総額(値引き単価×使用量)は使用量に応じて変動します。そのため、電力使用量の多い事業者ほど補助金による恩恵が大きくなる仕組みです。

電気代の補助金制度の目的と背景

電気料金の補助金制度が導入された背景には、2022年以降の世界的なエネルギー価格の高騰があります。ロシアによるウクライナ侵攻の影響でLNG(液化天然ガス)や原油の価格が急騰し、日本の電気料金も大幅に上昇しました。

上記を受けて、政府は一時的な措置として補助金制度を導入。急激な価格変動による衝撃を和らげることを目的として、値引き支援を複数年度にわたって実施してきました。

2025年までの補助金実施状況と推移

電気料金の補助金支援は、2023年1月から2025年9月までの間、制度の名称や補助額を変えながら断続的に実施されてきました。実施期間と補助内容の変遷を見ると、政府がエネルギー価格の動向や経済状況に応じて、柔軟に支援を調整してきたことがわかります。

電気・ガス価格激変緩和対策事業(2023年1月~2024年5月)

最も長期間にわたって実施された補助金制度です。この期間中、低圧契約では当初1kWhあたり7.0円という手厚い補助が行われ、段階的に縮小されながらも約1年半にわたって支援が継続されました。

高圧契約の事業者に対しても低圧の半額程度の補助が提供され、製造業や商業施設など電力使用量の多い事業者の経営を下支えしました。この時期の補助金により、多くの企業が急激な電力コスト増加に対応する時間的猶予を得られたといえます。

酷暑乗り切り緊急支援(2024年8月~2024年10月)

2024年8月から10月に実施されたのが、夏場の電力需要増加に対応した補助金支援です。記録的な猛暑により冷房需要が急増したことを受け、以下のような補助が行われました。

  低圧契約 高圧契約
2024年8・9月使用分(9・10月検針分) 4.0円/kWh 2.0円/kWh
2024年10月使用分(11月検針分) 2.5円/kWh 1.3円/kWh

この施策は、エアコン使用による電力消費が増える季節に焦点を当てた支援として注目されました。特に商業施設や飲食店といった顧客のために空調を長時間稼働させる必要がある業種では、夏場の電力コスト増加が深刻な経営課題となっており、補助金が大きな助けになったと考えられます。

電気・ガス料金負担軽減支援事業(2025年1月~3月、7月~9月)

2025年には1月から3月に「電気・ガス料金負担軽減支援事業」として支援が再開され、その後7月から9月にも以下のような支援が行われました。

  低圧契約 高圧契約
2025年1・2月使用分(2・3月検針分) 2.5円/kWh 1.3円/kWh
2025年3月使用分(4月検針分) 1.3円/kWh 0.7円/kWh
2025年7月使用分(8月検針分) 2.0円/kWh 1.0円/kWh
2025年8月使用分(9月検針分) 2.4円/kWh 1.2円/kWh
2025年9月使用分(10月検針分) 2.0円/kWh 1.0円/kWh

2026年の電気代補助金はどうなる?

2025年9月をもって電気・ガス料金負担軽減支援事業による補助金は一旦終了しましたが、エネルギー価格の先行きの不透明感を受け、2025年11月には再び電気・ガス料金負担軽減支援事業による補助金が、2026年1月から3月にかけて再開されることが発表されています。

  低圧契約 高圧契約
2026年1・2月使用分(2・3月検針分) 4.5円/kWh 2.3円/kWh
2026年3月使用分(4月検針分) 1.5円/kWh 0.8円/kWh

補助金終了後の電気代への影響

補助金制度の終了は、事業者の電力コストに直接的な影響を与えます。補助金がある期間とない期間では、同じ使用量でも請求額が大きく変わるため、資金繰りや収益計画にも影響が及ぶでしょう。

一般的な事業者の負担増加額

例えば、月間10,000kWhの電力を使用する中規模事業者の場合、補助金があった2025年8月と補助金のない2025年10月以降を比較すると、月額で12,000円の負担増(※高圧1.2円/kWhを前提)となります。年間に換算すると、補助金の有無だけで10万円以上の差が生じてしまいます。

小売店舗や飲食店など、電力使用量が月間3,000kWh程度の小規模事業者でも、補助金終了により月額7,200円のコスト増(※低圧2.4円/kWhを前提)が見込まれます。利益率の低い業種では特に、こうした増加分は経営を圧迫する要因となりかねません

燃料費調整額と再エネ賦課金の影響

電気料金の上昇要因は、補助金の終了だけではありません。電気料金は主に以下の4項目で構成されており、なかでも燃料費調整額と再生可能エネルギー発電促進賦課金は、昨今特に電気料金の上昇につながりやすい要素となっています

  • 基本料金
  • 電力量料金(従量料金)
  • 燃料費調整額
  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金

燃料費調整額は原油やLNG(液化天然ガス)の輸入価格に連動して毎月変動し、国際情勢や為替レートの影響を直接受ける費用です。今後も円安傾向が続く場合、燃料費調整額も高止まりする可能性が高いといえます。

再生可能エネルギー普及促進のために徴収される再生可能エネルギー発電促進賦課金は年々増加傾向にあり、2025年度には3.98円/kWhまで上昇しました。使用量に比例して負担が増えるため、電力使用量の多い事業者にとっては無視できないコスト要因となっています。

事業者が取り組むべき電気料金の削減策

補助金に頼らず持続的に電力コストを抑えるには、複数の対策を組み合わせた総合的なアプローチが必要です。短期的に効果が出る施策と中長期的な投資を要する施策を適切に組み合わせることで、確実なコスト削減を実現できます。

電力会社とプランの見直し

電力小売が全面自由化されたことで、2016年4月以降は家庭・法人を問わず、契約する電力会社を自由に選べるようになりました。

現在契約している電力会社が必ずしも最安とは限らず、事業形態や使用パターンに合わせたプラン変更により、年間で数万円から数十万円のコスト削減が可能なケースもあります

特に電力使用量の多い製造業や24時間営業の店舗などでは、時間帯別の料金設定や基本料金の見直しだけでも大きな効果が期待できるでしょう。

ただし、電力会社やプランによって契約条件が異なるため、専門知識を持つコンサルタントに相談しながら最適な選択をすることが重要です。

設備の省エネ化と運用改善

照明のLED化やエアコンの最新省エネモデルへの更新は、初期投資を要するものの中長期的には確実なコスト削減につながります。特に10年以上前の設備を使用している場合、最新機器への更新により消費電力を30%から50%削減できるケースも少なくありません。

運用面では、空調の温度設定や稼働時間の最適化、不要な照明の消灯など、日々の業務の中で実践できる省エネ施策も効果的です。従業員全体で省エネ意識を共有し、小さな取り組みを積み重ねることで、設備投資なしでも5%から10%程度の削減が見込めるでしょう。

ESP方式による電力調達の最適化

ESP方式とは、Energy Service Providerの略で、電力調達から設備改善まで総合的にサポートするサービスです。この方式では、専門事業者が複数の電力会社から最適な調達先を選定し、継続的に料金プランの見直しや使用状況の分析を行います。

事業者自身で電力市場の動向を常に把握し、最適なタイミングで電力会社を切り替えるのは現実的に困難です。ESP方式を活用すれば、電力調達の専門家が市場動向を常時監視し、コスト削減の機会を逃さず提案してくれるため、本業に集中しながら電力コストの最適化を実現できます。

電気代の補助金に関するよくある質問

ここからは、電気料金の補助金に関するよくある質問に回答していきます。

Q:電気代の補助金はいつまで実施されていましたか?

電気料金の補助金は、2023年1月から断続的に実施されており、2025年9月使用分をもって一度終了しましたが、2025年11月には2026年1月から3月の再開が発表されています。

Q:補助金が終了すると電気代はどのくらい上がりますか?

補助金の有無による影響は、事業者の電力使用量によって異なります。月間10,000kWh使用する事業者の場合、補助金があった2025年8月と比較すると、高圧(1.2円/kWh相当)なら月額約12,000円、低圧(2.4円/kWh相当)なら月額約24,000円の負担増となります。

Q:電力会社を変更する際の注意点はありますか?

電力会社変更時は、契約期間や解約金の有無、支払い方法の対応状況を確認することが重要です。事業形態や電力使用パターンに合わないプランを選ぶと、かえってコスト増になる可能性もあります。専門知識を持つコンサルタントに相談し、総合的な視点で判断することをおすすめします。

Q:電力コスト削減の効果はどのくらいで出ますか?

電力会社やプランの変更による効果は、切り替え後すぐに実感できます。省エネ設備の導入は初期投資を要しますが、中長期的には年間数十万円から数百万円規模のコスト削減が期待できます。

補助金に頼らない電気代の最適化を

2025年7月から実施されていた電気料金の補助金は、2025年9月で終了しました。2025年11月には2026年1月からの支援再開が発表されましたが、期間は3ヶ月間に限られています。

断続的な補助金に依存せず電力コストを抑えるには、電力会社・料金プランの見直し、省エネ設備の導入、ESP方式による継続的な最適化といった対策が有効です。とくに電力使用量が多い事業者ほど、専門的な知見を活用した電力調達の最適化により、事業規模や使用特性によっては、継続的なコスト最適化につながる可能性があります。

本記事で紹介したポイントを参考に、補助金の有無に左右されない電気料金の削減に取り組んでみてください。