電気料金を構成する要素の1つである再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)は、毎年単価が見直される費用です。毎年3月中旬〜下旬に経済産業省が翌年度の単価を決定し、5月検針分から翌年の4月検針分まで同じ単価が適用されます。
法人・自治体の電力コスト管理において、最新の単価動向を把握しておくことは不可欠です。
本記事では、2026年度の最新単価と負担額の目安、これまでの推移、そして2027年度以降の見通しまで、詳しく解説していきます。
再エネ賦課金とは何か

再エネ賦課金の基本的な仕組みと、単価が決定・公表されるタイミングを理解することが、予算管理の第一歩となります。
再エネ賦課金は再生可能エネルギーの普及費用を広く負担する制度
再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)は、FIT・FIP制度に基づいて再生可能エネルギー由来の電力を買い取る際に生じる費用を、電力使用者全体で広く負担する仕組みです。
この制度は2012年7月にスタートしました。太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーの普及を促進するため、発電事業者に対して一定期間、固定価格での買取を保証しています。
その買取費用を電力使用者が「再エネ賦課金」という形で負担する構造です。
※再エネ賦課金の基本的な仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
単価は毎年3月頃に公表され、5月検針分から反映される
再エネ賦課金の単価は、毎年3月頃に経済産業省から公表され、5月検針分の電気料金から翌年4月検針分まで適用されます。2026年度の単価は、2026年3月19日に発表されました。
この適用タイミングは、法人・自治体の予算管理において重要なポイントです。年度途中の5月から新単価が適用されるため、同一年度内に2つの異なる単価が混在することになります。予算編成時には、この切り替えタイミングを考慮した計算が必要となるでしょう。
2026年度の再エネ賦課金は?

2026年度の最新単価と、それが法人・自治体の負担にどう影響するかを具体的に確認していきます。
2026年度の単価は4.18円/kWh
経済産業省の発表によると、2026年度の再エネ賦課金単価は4.18円/kWhです。なお、再エネ賦課金は消費税の課税対象外であるため、この金額がそのまま適用されます。これは2025年度の3.98円/kWhから0.20円の増額となり、制度開始以来初めて4円台を突破しました。
この新単価は、2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用されます。
【規模別】年間負担額の目安:月5万kWhなら年間約250万円
2026年度の単価4.18円/kWhを基準に、法人・自治体の電力使用規模別の年間負担額を試算すると、以下のようになります。
|
月間使用電力量 |
年間使用電力量 |
年間負担額 |
前年度比 |
|---|---|---|---|
|
1万kWh |
12万kWh |
約50万円 |
+約2.4万円 |
|
3万kWh |
36万kWh |
約150万円 |
+約7.2万円 |
|
5万kWh |
60万kWh |
約250万円 |
+約12万円 |
|
10万kWh |
120万kWh |
約500万円 |
+約24万円 |
月5万kWhを使用する事業所では、再エネ賦課金だけで年間約250万円の負担となります。前年度(3.98円/kWh)と比較すると、同じ使用量でも年間約12万円の増加です。電力使用量が多い製造業や商業施設にとっては、無視できない規模のコストと言えるでしょう。
なぜ2026年度は上がったのか
2026年度の再エネ賦課金が上昇した背景には、FIT・FIP制度に伴う買取費用等が高水準で推移していることに加え、回避可能費用等の見込みが減少したことがあります。
回避可能費用とは、再生可能エネルギーの電気を買い取ることで、電力会社が火力発電などで本来かかるはずだった燃料費や電力調達費を避けられる分の費用のことです。この回避可能費用は、卸電力市場価格(JEPX)を基準に算定されます。
再エネ賦課金は、買取費用等から回避可能費用等を差し引いて算定されます。そのため、回避可能費用等が減少すると、利用者全体で負担する必要のある金額が増え、賦課金単価が上がりやすくなります。
2026年度の賦課金が電気代にどう影響するか

再エネ賦課金が電気料金全体の中でどのような位置づけにあり、実務上どのような影響を及ぼすのかを整理していきましょう。
電気料金の構成要素における賦課金の位置づけ
電気料金は、大きく分けて以下の要素で構成されています。
|
基本料金 |
契約電力に応じた固定費 |
|---|---|
|
電力量料金 |
使用電力量に応じた従量費 |
|
燃料費調整額 |
燃料価格の変動を反映 |
|
再エネ賦課金 |
全国一律で使用量に比例 |
|
その他 |
容量拠出金、託送料金など |
このうち、再エネ賦課金は全国一律の単価であり、使用電力量に比例して加算されます。電力量料金が電力会社や料金プランによって異なるのに対し、再エネ賦課金はどの電力会社と契約していても同じ単価が適用される点が特徴です。
「賦課金は電力会社を変えても変わらない」がもつ実務上の意味
再エネ賦課金は、電力会社を切り替えても負担額は変わりません。これは制度上、全国一律の単価が設定されているためです。したがって、電力会社の切り替えを検討する際には、「基本料金」「電力量料金」「燃料費調整額」などの変動要素に着目する必要があります。
つまり、電力コスト削減を目指す場合、再エネ賦課金以外の部分で削減余地を見つけることが実務上の鍵になるということです。
自治体の予算管理:5月改定に伴う年度内の単価混在に注意
自治体や4月決算の法人にとって、再エネ賦課金の適用タイミングは予算管理上の注意点となります。年度は4月から始まりますが、再エネ賦課金の新単価は5月検針分から適用され、同一年度内に2つの単価が混在するため注意が必要です。
具体的には、2026年度(2026年4月~2027年3月)の予算を立てる場合、
- 2026年4月検針分:2025年度単価(3.98円/kWh)が適用
- 2026年5月~2027年3月検針分:2026年度単価(4.18円/kWh)が適用
となります。
この単価の切り替えを織り込んだ予算編成を行わないと、年度途中で予算超過が発生するリスクがあります。
2012年度以降の単価推移と構造的な背景
再エネ賦課金がこれまでどのように推移してきたか、そしてその背景にある構造を理解することで、今後の見通しを立てやすくなります。
再エネ賦課金は長期では上昇傾向にある
再エネ賦課金の単価は、制度開始の2012年度から長期的に上昇傾向にあります。具体的な推移は、以下の通りです。

注目すべきは、2023年度に一時的に大幅減少したものの、その後再び上昇に転じている点です。2023年度の急減は、2022年度にかけての卸電力市場価格の高騰により「回避可能費用」が増加したためであり、燃料価格の変動という一時的な要因によるものでした。
2024年度以降は市場価格が落ち着いたため、再び上昇トレンドに戻っています。制度が開始した2012年度(0.22円/kWh)と比較すると、約19倍の水準です。
単価の算定式:「買取費用 − 回避可能費用(市場価値)」で決まる
再エネ賦課金の単価は、以下の計算式で算定されます:
再エネ賦課金単価 = (買取費用等の見込み額 − 回避可能費用等の見込み額 + 事務費等の見込み額) ÷ 販売電力量の見込み
ここで「買取費用」とは、FIT・FIP制度に基づく再生可能エネルギーの買取に要する費用の総額です。一方、「回避可能費用」とは、再生可能エネルギーを買い取ることで、火力発電等の発電コストを節約できたと見なされる費用を指します。
この構造を理解しておくと、「なぜ市場価格が上がると賦課金が下がるのか」「なぜ市場が落ち着くと再び上がるのか」という動きの背景が見えてきます。
2027年度以降の再エネ賦課金はどうなる?

今後の再エネ賦課金の動向を予測する上で、短期的な要因と中長期的な構造要因の両面から整理していきます。
2027年度の賦課金単価は下がる可能性がある。ただし、それは「安心材料」ではない
2026年3月以降、中東情勢の悪化によって原油・LNG価格が急騰し、卸電力市場価格(JEPX)も大きく上昇しています。市場価格が上がれば回避可能費用も増加するため、算定式上、2027年度の賦課金単価は低下する方向に作用します。
しかし、賦課金の単価が下がったとしても、それを「コスト負担が軽くなるサイン」と受け取るのは危険です。実際に、過去にも同じ構造が起きています。
2022〜2023年度の教訓:賦課金が下がっても、電気代全体は上がった
2022年度にかけてJEPXシステムプライスの年度平均が約20円/kWhまで高騰した際、翌2023年度の賦課金単価は1.40円/kWhまで急落しました。
しかし、電気代全体が下がったわけではありません。市場価格の高騰は燃料費調整額や市場連動部分に直接反映され、賦課金の減少分を大きく上回るコスト増をもたらしました。
足元の中東情勢を受けて、JEPXは再び急騰局面に入っています。2027年度に同じパターンが再現される可能性は十分にあります。賦課金の数字だけを見て判断するのではなく、電気代総額の動きを注視する必要があるでしょう。
なお、こうした単価の変動はあくまで市場価格という外部要因によるものであり、FIT買取費用の総額が減少しているわけではありません。燃料価格が落ち着けば、賦課金は再び上昇トレンドに戻る構造です。
中長期の構造要因:FIT買取費用の積み上がりと卒FITの影響
前節では、市場価格の変動が賦課金単価を短期的に上下させる構造を確認しました。では、こうした変動を除いた「基調」はどう動くのか。中長期の方向性を左右するのは、算定式の分子側、すなわち買取費用の総額です。
根拠①:FIT認定設備の累積増に伴う買取総額の拡大
FIT制度の下で認定された太陽光発電設備は、認定年度の買取価格で10年〜20年間の固定価格買取が保証されます。新規認定が増えるほど、買取費用の総額は積み上がっていく構造です。
特に、2012年〜2016年頃に高い買取価格(40円/kWh前後)で認定された設備が依然として買取期間中であり、これらの設備の買取費用が賦課金の負担を押し上げています。
根拠②:卒FIT増加と制度見直し(2027年目途)の論点
一方で、2019年以降、住宅用太陽光のFIT買取期間が順次終了し、「卒FIT」が増加しています。卒FIT後はFITによる固定価格買取の対象外となるため、FITの買取費用を押し上げる要因は相対的に弱まります。
また、2025年度下期の認定分以降、屋根設置太陽光(住宅用10kW未満および事業用10kW以上)には「階段型の価格設定」を採用する初期投資支援スキームが導入されました。導入初期に高い買取価格、後半に低い買取価格を設定することで、発電事業者の早期投資回収を支援する仕組みです。
こうした制度変更が、2027年度以降の再エネ賦課金にどう影響するかは、引き続き注視が必要です。
事業者・自治体が取るべきスタンス:賦課金の単価ではなく「電気代総額」で見る
再エネ賦課金の単価は、政策や市場環境によって変動する不確実性の高い要素です。法人・自治体が取るべきスタンスは、「賦課金の単価そのものをコントロールしようとする」のではなく、「電気代総額を最適化する」という視点で電力調達を考えることです。
具体的なアプローチとしては、大きく「すぐに着手できること」と「中期的に検討すべきこと」に分けて考えると整理しやすくなります。
【すぐに着手できること】
- 電力会社・料金プランの見直し(基本料金・電力量料金・燃料費調整額の比較)
- 契約電力の最適化(デマンド管理によるピークカット)
【中期的に検討すべきこと】
- 省エネ設備の導入やBEMSによる使用量の見える化と削減
- 再生可能エネルギーの自家消費(オンサイトPPA、オフサイトPPA)
再エネ賦課金は全国一律であり、個別に削減することはできません。しかし、電力使用量を減らせば、結果的に賦課金の負担額も減少します。
再エネ賦課金に関するよくある質問

再エネ賦課金について、よくある質問とその回答を以下にまとめます。
Q:再エネ賦課金は電力会社を切り替えれば安くなりますか?
いいえ、再エネ賦課金は全国一律の単価であり、どの電力会社と契約していても同じ金額が適用されます。電力会社を切り替えても、再エネ賦課金の負担額は変わりません。
電力コスト削減を目指す場合は、基本料金や電力量料金、燃料費調整額など、電力会社によって異なる部分に着目する必要があります。複数の電力会社から見積もりを取得し、総額で比較検討することが重要です。
Q:法人でも減免を受けられますか?
再エネ賦課金には、電気を大量に使用する事業者向けの減免制度が設けられています。条件を満たせば法人も対象となり得ますが、すべての法人が自動的に適用されるわけではありません。
主な要件としては、業種区分、年間の電気使用量、原単位(電気使用量[kWh]÷売上高[千円])、省エネへの取組状況などがあります。詳細については、経済産業省・資源エネルギー庁の概要資料やFAQを確認したうえで、契約している電力会社にお問い合わせいただくことをおすすめします。
Q:自治体の来年度予算には、どの単価を使えばよいですか?
自治体の予算編成(4月〜翌3月)では、4月検針分に前年度単価が適用され、5月以降に新年度単価が適用される点に注意が必要です。したがって、4月分は旧単価、5月〜3月分は新単価で積算するのが正確な方法です。
ただし、翌年度の単価は予算編成時点では未公表のため、直近の単価をベースに一定の上振れ幅を見込んで計上するのが実務的な対応です。
Q:2027年度以降は必ず上がるのでしょうか?
必ずしも上がるとは限りません。短期的には、卸電力市場価格の動向によって上下する可能性があります。特に、2026年3月以降の中東情勢の緊迫化に伴い燃料価格が高騰しており、市場価格が高止まりすれば回避可能費用が増加し、算定上の賦課金単価は下がる可能性もあります。
ただし、前述のとおり、賦課金の単価が下がったとしても電気代全体が下がるとは限りません。中長期的には、FIT認定設備の累積増に伴う買取総額の拡大という構造的な要因があるため、基本的には高止まりする見通しです。制度の見直しや卒FITの増加など、政策動向によって変化する可能性もあるため、継続的な情報収集が重要となります。
賦課金の上昇は「制度の構造」。対策は電力コスト全体の見直しから
2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWhと過去最高を記録し、法人・自治体にとって無視できないコスト要因となっています。制度開始から約14年間で単価は約19倍に増加しており、中長期的にも高止まりする見通しです。
再エネ賦課金の上昇は、FIT制度による再生可能エネルギー普及政策の構造的な結果であり、個別の事業者がコントロールできる要素ではありません。重要なのは、「賦課金の単価」ではなく「電気代総額」を最適化する視点で電力調達を考えることです。
また、2026年3月以降の中東情勢の影響で、今後は燃料費調整額を含めた電気料金全体の変動リスクが高まっています。賦課金だけでなく、コスト構成全体を俯瞰した管理がこれまで以上に重要です。

POINT
電力使用量の削減、料金プランの見直しなど、多角的なアプローチを組み合わせることで、再エネ賦課金の負担増を吸収しながら、電力コスト全体を抑制することができる。まずは自社の電力コスト構造を正確に把握し、どこに削減余地があるかを見極めることが第一歩じゃ。2027年度以降の動向も注視しながら、戦略的な電力調達を進めていくのじゃ。

















