電力調達の選択肢が広がる中、「分割供給」という契約手法が法人・自治体の間で注目を集めています。

分割供給とは、1つの事業所や施設に対して、2社の電力会社が役割を分担しながら電気を供給する仕組みです。2024年10月から、従来の「部分供給」に代わる新しい制度として始まりました。

本記事では、分割供給の基本的な仕組み、部分供給との違い、向いている需要家の特徴、そして契約時の注意点まで、法人・自治体向けに実務視点で解説します

分割供給とは、1つの施設に2社の電力会社から電気を供給する仕組み

まずは分割供給の基本的な仕組みと、2つの供給パターンについて見ていきましょう。

基本ルールは「1つの施設・1つのメーター・2社まで」

通常、企業や自治体の電力契約は、1社の電力会社から施設で使う電気を全量購入します。一方、分割供給は、2社の電力会社が役割を分担して1つの施設に電気を供給する契約形態です。

対象は、工場・オフィスビル・公共施設など、高圧または特別高圧で受電している事業所で、家庭や小規模な店舗が使う「低圧」の契約では利用できません。また、1つの施設につき契約できる電力会社は最大2社までと決められています。

電気は、これまでと同じく1つの引込線・1つのメーターでまとめて受け取ります。料金や供給量の仕分けは電力会社と送配電会社の間で処理されるため、施設側で配線を分けたり、メーターを増設したりする必要はありません

「量で分ける方式」と「時間帯で分ける方式」の2パターン

分割供給では、2社の供給方法を以下の2パターンから選びます。

※出典:分割供給の導入について|資源エネルギー庁

需要追随+非需要追随(量で分ける方式) 1社が決まった量を安定して供給し、もう1社が残りの変動分を供給する
需要追随+需要追随(時間帯で分ける方式) 時間帯ごとに、担当する電力会社を分けて供給する

「量で分ける方式」では、毎時1,000kWを電力会社Aから固定で受け、それを超える変動分は電力会社Bから受ける、といった設計が可能です。「時間帯で分ける方式」では、昼間は電力会社A、夜間は電力会社B、という形で時間帯ごとに供給元を切り替えられます。

価格・再エネ・安定性を分けて設計できる点が特徴

分割供給の最大の特徴は、電力契約を「価格の安定性」「環境価値」「変動リスクへの対応」など、複数の観点から組み合わせて設計できる点です。代表的な活用パターンには、以下のような組み合わせがあります。

価格安定型 ベース部分は固定価格の長期契約、変動部分は市場連動型プランで調達する組み合わせ
再エネ重視型 オフサイトPPAによる再エネ電力と、不足分を補う通常の電力会社の組み合わせ
時間帯活用型 昼間と夜間、あるいは平日と休日など、使用パターンが異なる時間帯ごとに電力会社を分ける組み合わせ

「自社で何を優先したいのか」を起点に、最適な設計を検討できる点が分割供給の本質的な強みといえます。

POINT

施設の使い方や調達方針に合わせて、電力契約を柔軟に組み立てられるのが分割供給の強みなのじゃ。

分割供給と部分供給の違い

「分割供給」と似た仕組みとして「部分供給」があります。両者は似ていますが、制度の位置づけや利用できる電力会社の組み合わせに違いがあります。

部分供給は「期間限定の支援策」、分割供給は恒久制度

部分供給は、2013年に始まった古い仕組みです。

電力自由化が進む中で、新電力(大手電力会社以外の電力会社)が単独では電気を十分に確保できなかった時期に、大手電力会社の協力を得て新電力が事業を続けられるように設けられた、いわば「期間限定の支援策」でした。

その後、新電力でも電気を調達しやすい環境が整ったことから、部分供給は役割を終えたと判断され、2024年10月で新規受付が終了。既存の部分供給契約についても、2025年7月1日までに分割供給へ移行する整理となっています。

一方で分割供給は、再エネの普及など新しいニーズに対応する恒久的な制度として整備されました。大手電力会社との組み合わせに限らず、新電力同士の組み合わせも可能です

電力会社の組み合わせや申込手続きにも違いがある

両者の主な違いを整理すると、以下のとおりです。

項目 部分供給 分割供給
電力会社の組み合わせ 大手電力会社+新電力 すべての電力会社で組み合わせ可能(新電力同士も可)
制度の位置づけ 期間限定の支援策 恒久的な制度
新規受付 2024年10月で終了 2024年10月から開始
対象 高圧・特別高圧の施設 高圧・特別高圧の施設(低圧は対象外)

つまり、これから新しく契約を検討する場合は「分割供給」が選択肢となり、現在「部分供給」を契約している場合は2025年7月までに分割供給への移行が必要、と整理できます。

分割供給が注目されている理由

分割供給が法人・自治体の間で注目される背景には、電力市場環境の変化と再エネ調達ニーズの高まりがあります。

電気料金の変動リスクを一社契約だけで抑えにくくなっている

近年、燃料価格の高騰や電力市場価格の急激な変動により、電気料金の見通しを立てることが難しくなっています。特に2026年春以降は、中東情勢を起因とする燃料価格の上昇により、料金変動の幅が大きくなっています。

電力市場の価格に連動するプラン1本だけで全量契約していると、市場価格が高騰した際に予算が大きく超過するリスクがあります。一方、固定価格プラン1本だけでは、市場価格が下がっても恩恵を受けられません。

分割供給を使えば、たとえば「使用量のうち、毎月安定して使うベース部分は固定価格で長期契約し、変動分だけを市場連動型プランで調達する」といった、両者の利点を活かす設計が理論上可能になります。

再エネ調達やPPAとの組み合わせ余地が広がっている

脱炭素経営を進める企業や自治体にとって、再エネの調達は重要な課題です。オフサイトPPAにより太陽光発電などの再エネ電力を調達する場合、夜間や発電量が不足する時間帯には別の電源が必要になります。

分割供給を活用すれば、日中の太陽光発電分をオフサイトPPAで確保し、夜間や不足分を別の電力会社から調達するといった組み合わせが可能です。また、再エネ特化型の新電力と、価格競争力のある別の新電力を組み合わせることで、環境価値とコストの両立を図る設計も実現できます。

これにより、再エネ比率を高めながら、安定的な電力供給も実現できます。

分割供給が向いている法人・自治体

分割供給は柔軟な制度ですが、すべての需要家に適しているわけではありません。施設の使い方や調達方針によって向き・不向きがあります。

ベースの使用量が大きく、使い方が安定している施設

24時間稼働の工場、データセンター、病院、物流施設、上下水道施設などが代表例です。

ベース部分を固定単価で長期契約し、ピーク時や変動分だけを別の電力会社から調達することで、全体の電気料金変動リスクを抑えながら、効率的な調達が可能になります

逆に、使用電力量の変動が大きい施設や、小規模な事業所では、分割供給による効果が限定的になる可能性があります。

単年度予算を重視する自治体・公共施設

地方自治体は、単年度予算で運営されることが多いため、電気料金の急変動は予算編成に大きな影響を与えます。使用量の大半を固定価格で契約することで、燃料費調整額の変動による影響を受けにくくなり、予算の見通しが立てやすくなります。

また、自治体は施設ごとに使用パターンが大きく異なるため、時間帯活用型の組み合わせも有効です。たとえば、夜間にポンプ稼働の電力需要が大きい上下水道施設では、夜間は深夜電力に強みを持つ電力会社、日中は別の電力会社という組み合わせも検討できます。

議会や住民への説明責任の観点からも、価格変動メカニズムの異なる複数の調達を組み合わせることで、電気料金の構成要素を整理して説明しやすくなる点はメリットといえます。

再エネ調達を進めたい企業・自治体

RE100やカーボンニュートラル目標を掲げる企業、再エネ導入を推進する自治体にとって、分割供給は再エネ調達手段の1つとして有効です。

オフサイトPPAで再エネ電力を一定量確保しつつ、不足分を別の電力会社から調達することで、再エネ比率を高めながら電力の安定供給も実現できます

また、複数の再エネ電源(太陽光・風力など)を組み合わせる場合や、再エネ証書付きプランと通常プランを併用する場合にも、分割供給の枠組みが活用できます。

分割供給を検討する際の注意点

分割供給は柔軟な調達手法ですが、導入を検討する際には次の4点を押さえておく必要があります。

必ずしも電気料金が安くなるわけではない

分割供給は「料金削減のための制度」ではなく、価格変動リスクを分散したり、再エネ調達を組み合わせたりするための制度です。設計の仕方によっては、全量を1社から購入するよりも総額が高くなる場合もあります。

「予算の見通しが立てやすくなる」「再エネ比率を高められる」など、自社・自施設の目的に合っているかどうかが、重要な判断軸となります

手続きが通常の電力切替よりも重い

分割供給では、2社の電力会社と需要家、そして送配電会社の三者で事前協議を行い、申込手続きを進める必要があります。通常の電力会社切替えと比較すると手続きは煩雑になるため、契約条件の調整から供給開始までに3〜6か月程度を見込んでおくと安心です。

現在の契約内容を事前に確認する

分割供給を始めるには、現在の電力契約を見直す必要があります。契約期間中の解約には違約金が発生する場合があるため、まず現契約の満了時期や解約条件を確認しましょう。

料金の計算ルールがやや複雑になる

分割供給では、送配電網の利用料金(託送料金)の計算が通常とは少し異なります。とはいえ、需要家が最終的に支払う送配電網の利用料金は、1社から全量供給を受ける場合と同額になるよう調整される仕組みになっています。

複雑な処理は電力会社と送配電会社の間で完結するため、需要家側で実務的に難しい計算が必要になるわけではありません

分割供給に関するよくある質問

最後に、分割供給に関するよくある質問とその回答を、以下にまとめます。

Q:分割供給と部分供給は同じですか?

いいえ、異なります。部分供給は2013年に始まった期間限定の支援策で、大手電力と新電力の組み合わせのみが可能でした。分割供給は2024年10月から始まった恒久的な制度で、新電力同士の組み合わせも可能です。

Q:分割供給にすると必ず電気料金は安くなりますか?

必ずしも安くなるとは限りません。分割供給の主な目的は「料金削減」ではなく、「価格変動リスクの分散」や「再エネ調達との組み合わせ」です。

設計の仕方によっては、料金変動を抑えやすくなる一方、総額では全量供給より高くなる場合もあります。重要なのは、自社の調達方針に合致するかどうかです。

Q:オフサイトPPAでも分割供給は活用できますか?

はい、有力な組み合わせの1つです。たとえば、オフサイトPPAで太陽光発電などの再エネ電力を確保し、夜間や不足分を別の電力会社から調達する組み合わせが可能です。これにより、再エネ比率を高めながら安定的な電力供給を実現できます。

Q:自治体でも分割供給を検討できますか?

はい、高圧・特別高圧で受電する公共施設であれば検討可能です。施設の使用パターンに応じて、固定価格部分と変動部分を分ける設計や、時間帯ごとに電力会社を分ける設計など、複数のアプローチを検討できる点が分割供給の強みです。

一方で、入札・契約手続きの公平性確保など、自治体ならではの実務上の確認は必要です。

分割供給は調達戦略を最適化するための新しい選択肢

2024年10月から始まった分割供給は、1つの施設に対して2社の電力会社から電気を購入できる新しい契約手法です。

価格変動リスクの分散、再エネ調達との組み合わせなど柔軟な電力調達を実現できるため、電力使用量が大きい施設や再エネ調達を進めたい企業に適しています。

POINT

ただし、分割供給は「必ず料金が安くなる」仕組みではないぞ。あくまで「自社・自施設に合った調達戦略を組み立てる」ための道具じゃ。施設の使い方、予算管理の方針、脱炭素目標などを総合的に考えて、自社に合うかどうかを判断するのじゃ。

エネリンクのESP方式では、施設ごとの使用電力データや契約条件をもとに、複数の電力会社の提案を比較し、自社・自施設にとって現実的な調達方針を整理します。

電気料金の見通しが立てにくい今こそ、制度の新しさだけで判断するのではなく、実務上採用できる選択肢を冷静に比較することが大切です