猛暑や厳冬、発電設備のトラブルなどにより電力需給がひっ迫すると、国や電力広域的運営推進機関(OCCTO)から「節電要請」が呼びかけられることがあります。企業や自治体にとって、節電要請への対応は業務継続と住民サービスの維持、そして電力コストの管理という複数の視点から重要な課題です。

しかし「節電要請が出たら何をすべきか」「計画停電との違いは何か」といった疑問を抱えている担当者も多いのではないでしょうか

加えて、2026年は中東情勢を背景に燃料調達リスクへの警戒が高まり、広域機関が高需要期に向けた臨時のモニタリングを実施するなど、需給動向への注目度が例年以上に高まっています。

本記事では、節電要請の基本的な仕組みから具体的な対策、電気料金削減につなげるポイントまで、実務視点で解説します。

節電要請とは?まず押さえるべき基本

節電要請の基本的な性質と、よく混同される計画停電との違いを理解しておくことは、適切な対応を準備する上で重要です。ここでは「強制力の有無」と「発令の段階」という2つの観点から整理します。

節電要請は「電気を止める命令」ではなく協力要請

節電要請とは、電力需要が供給力に迫り、電力の安定供給が困難になる可能性がある場合に、企業や家庭に対して節電への協力を呼びかけるものです。法的な強制力はなく、あくまで無理のない範囲での協力を求めます。

発令には段階があります。 電力の安定供給には、需要に対して最低限3%以上の予備率が必要とされています。

この予備率の見通しに応じて、5%を下回る見通しとなった場合に「電力需給ひっ迫注意報」、3%を下回る見通しとなった場合に「電力需給ひっ迫警報」が発令され、それぞれの段階で節電への協力が呼びかけられます。

計画停電とは強制力と影響範囲が異なる

計画停電は節電要請とは強制力と影響範囲が根本的に異なります。 節電要請があくまで協力のお願いであるのに対し、計画停電は実際に対象地域の電力供給を一時的に停止する措置であり、強制力を伴います

項目 節電要請 計画停電
性質 協力要請(任意) 実際の停電(強制)
影響範囲 協力した範囲のみ 対象地域全域
発令条件 予備率が3%を下回る見通し あらゆる需給対策後も供給力不足
実施主体 国(経済産業省)および電力広域的運営推進機関(OCCTO) 一般送配電事業者

計画停電は、あらゆる供給力対策および節電要請を実施してもなお需給状況が改善しない場合の最終手段として位置づけられているのです。

節電要請が出される主な背景

節電要請は、電力需要の急増または供給力の低下により、需給バランスが崩れる可能性がある場合に発令されます。主な背景として、需要側と供給側のそれぞれに要因があります。

猛暑・厳冬で電力需要が急増する

需要側の最大の要因は、猛暑・厳冬といった異常気象です。夏季は冷房需要、冬季は暖房需要により、特に昼間の電力使用量がピークに達します。

近年では気候変動の影響により、過去に例のない高温・低温が記録されるケースが増えています。電力需給の見通しは異常気象の可能性を想定して供給力を確保していますが、想定を超える場合には需給バランスが急速に悪化します

発電設備トラブルや燃料調達リスクで供給力が下がる

供給側の要因として挙げられるのが、発電設備の突発的なトラブルや燃料調達リスクです。特に、火力発電の燃料となるLNG(液化天然ガス)は長期貯蔵が難しく、国際情勢の影響を受けやすいため、地政学的リスクが供給力の不確実性を高める構造があります。

発電設備トラブル 老朽化した火力発電所の故障、定期点検の長期化、原子力発電所の稼働停止などにより、供給力が想定より減少。
燃料調達リスク 国際情勢の変化によりLNG(液化天然ガス)や石炭の調達が困難になると、火力発電所の稼働率が低下するリスク。

これらの要因が複合的に重なると、予備率が急速に低下し、節電要請の発令につながります。

節電要請が企業・自治体に与える影響

節電要請は法的な強制力を持たないものの、企業や自治体の業務運営と予算管理に間接的な影響を及ぼす可能性があります。

業務継続や住民サービスに影響する可能性がある

企業にとっては、節電要請に対応するために生産ラインの稼働時間の調整や空調設定の変更が必要になる場合があり、特に製造業では、ピーク時間帯の電力使用を避けるために操業時間をシフトする対応が求められることもあるでしょう。

自治体施設では、庁舎や公民館、福祉施設などで節電対応を行う必要がありますが、照明や空調の調整は可能な一方、窓口業務やシステム運用など「止められない負荷」との切り分けが、住民サービスの質を維持する上で重要になります。

電気料金や予算管理への影響にも注意が必要

需給がひっ迫する局面では、燃料価格そのものも高騰しやすく、燃料費調整額の上昇を通じて電気料金が押し上げられる傾向があります。つまり、節電要請への対応コストと電気料金の上昇が同時に発生しうるという点に留意が必要です。

また、節電対応として一時的に業務時間を変更した場合、人件費や設備稼働コストの増加といった副次的な影響が生じる可能性もあります。節電対応がコスト全体に与える影響を総合的に評価することが、予算管理上の説明責任を果たす上でも重要です。

無理なくできる節電要請対策

節電要請への対応は「我慢」だけでは長続きしません。日常運用の見直しや時間帯のシフトなど、無理なく継続できる対策を中心に検討しましょう。

空調・照明など日常運用を見直す

最も基本的な節電対策は、空調と照明の運用見直しです。

  • 空調設定の適正化(過度な冷暖房を避け、設定温度を見直す)
  • 使用していないエリアの照明の間引きと消灯
  • LED照明への切り替えによる消費電力の恒常的な削減

これらの対策は初期投資が少なく、すぐに実行できる点が利点です。

ピーク時間帯の電力使用をずらす

電力需給がひっ迫するのは、主に日中の電力需要がピークに達する時間帯(夏季は午後、冬季は夕方から夜)です。この時間帯の電力使用を前後にずらす「ピークシフト」は、需給ひっ迫緩和に効果的な打ち手であり、具体的には以下のような方法があります。

  • 始業・操業時間の前倒しや後ろ倒し
  • 空調のプレクール(事前冷房)・プレヒートによるピーク時間帯の負荷低減
  • 蓄電池や蓄熱設備を活用したピーク時の電力使用の抑制

ピークシフトは、使用電力量全体を減らさなくても需給ひっ迫の緩和に寄与できるため、業務への影響を最小限に抑えながら対応できます。

施設ごとに「止められる負荷」と「止められない負荷」を分ける

すべての電力使用を一律に削減するのではなく、施設や業務の特性に応じて「止められる負荷」と「止められない負荷」を明確に分けておくことで、需給ひっ迫時にも適切な判断ができ、業務継続と節電対応の両立が可能になります。

止められる負荷 エントランスの装飾照明、来客スペースの空調、自動販売機の一部など
止められない負荷 サーバー室の空調、医療機器、製造ラインの主要設備など

この切り分けを事前に行っておくことが、緊急時の判断スピードと、上司・議会への説明責任の双方を支える基盤となります。

節電をコスト削減につなげるためのポイント

節電要請への対応を単なる「お願いへの協力」で終わらせず、電気料金削減という経営効果につなげるには、契約内容と使用実態の両面から見直しが必要です。

使用量だけでなく契約電力も確認する

高圧・特別高圧で契約している企業や自治体の場合、電気料金は主に、基本料金・電力量料金・再生可能エネルギー発電促進賦課金などで構成されます。

高圧500kW未満など実量制の契約では、契約電力は当月を含む過去1年間の各月の最大需要電力のうち、最も大きい値(デマンド値)をもとに決定されます。そのため、一時的に大きな電力を使用すると、その後1年間高い基本料金を支払い続けることになります。

見落とされやすい点ですが、節電により使用電力量(kWh)を削減しても、契約電力(kW)が下がらなければ基本料金は変わりません。デマンド監視を行い、ピーク時の電力使用を抑えることで契約電力を下げ、基本料金の削減につなげることが重要です。

この「ピーク抑制による契約電力の低減」は、一度実現すれば恒常的なコスト削減効果を生むため、節電対応を一過性で終わらせない最大のポイントといえます。

料金プランが使用実態に合っているか見直す

電力自由化により、企業や自治体は市場連動型プランや時間帯別料金プランなど様々な料金プランから選択できるようになりました。使用実態に合わないプランを契約し続けていると、無駄なコストが発生している可能性があります。

定期的に使用実態を分析し、最適なプランを選択することがコスト削減の鍵となります。

エネルギーの見える化で効果を検証する

節電対策の効果を持続的に高めるには、「どこで」「いつ」「どれだけ」電力を使用しているかを可視化する「エネルギーの見える化」が有効です。

BEMS(ビルエネルギー管理システム)やデマンド監視装置を導入することで、リアルタイムで電力使用状況を把握でき、ピーク時の使用抑制や無駄な電力使用の発見につながります。見える化により、従業員や職員の節電意識も向上し、組織全体での取り組みが促進されます。

節電要請対策に関するよくある質問

最後に、節電要請に関するよくある質問とその回答を以下にまとめます。

Q:節電要請が出たら必ず業務を止めなければなりませんか?

いいえ、節電要請は法的な強制力を持たない協力要請です。業務を完全に止める必要はなく、空調設定の調整や照明の間引きなど、可能な範囲で節電対応を検討しましょう。ただし、企業の社会的責任(CSR)や地域貢献の観点から、できる限りの協力が望ましいといえます。

Q:節電要請と計画停電は同じ意味ですか?

いいえ、異なります。節電要請は協力のお願いであり、実際に電気が止まることはありません。一方、計画停電は実際に対象地域の電力供給を一時的に停止する措置で、強制力があります。

計画停電は、あらゆる需給対策を実施してもなお供給力が不足する場合の最終手段とされています。

Q:節電しても電気料金削減効果が出にくいのはなぜですか?

高圧・特別高圧契約の場合、基本料金が契約電力(過去1年間の最大需要電力)で決まるためです。使用電力量を減らしても、契約電力が下がらなければ基本料金は変わりません。

効果を出すには、ピーク時の電力使用を抑えて最大需要電力を下げ、契約電力の見直しにつなげることが必要です。

Q:自治体施設ではどこから見直すべきですか?

自治体施設は、電力使用量が大きい順に挙げると上下水道施設(浄水場・浄化センター)、清掃工場、小中学校といったインフラ系・教育系施設が上位を占めます。

ただし、上下水道や清掃工場は住民生活を支える「止められない負荷」が大半のため、節電要請への対応としては、まず空調・照明が主体の施設群から着手するのが現実的です。

具体的には、庁舎・小中学校・公民館・図書館・体育館など、冷暖房と照明の運用見直しで削減余地が大きく、かつ住民サービスへの影響を制御しやすい施設が優先対象となります。

POINT

施設ごとに「止められる負荷」と「止められない負荷」を明確にし、住民サービスに影響が出ない範囲で対策を進めることが重要じゃ。BEMS導入による見える化も、中長期的な効果が期待できる。特に上下水道などの大口施設は、節電要請への即応というより、契約電力やデマンドピークの最適化という中長期テーマで取り組むのが適切じゃ。

節電要請を機に、電力使用と契約内容を見直そう

節電要請は、電力需給ひっ迫への対応として国や電力広域的運営推進機関(OCCTO)から呼びかけられる協力要請ですが、企業や自治体にとっては「電力使用の実態を見直す機会」と捉えることもできます。

空調・照明の運用改善やピークシフトといった日常的な対策は、節電要請への対応としてだけでなく、通常時の電気料金削減にも効果を発揮します。さらに、契約電力の見直しや料金プランの最適化により、基本料金を含めた総合的なコスト削減を実現できるでしょう。

これからの電力調達戦略では、節電要請への対応を一時的な「お願いへの協力」で終わらせず、組織全体のエネルギーマネジメント強化と持続的なコスト削減につなげていくことが重要です。

POINT

とはいえ、自社・自施設の使用実態を客観的に把握し、契約やプランの最適化を独力で進めるのは容易ではない。現状のコスト構造に課題を感じている場合は、専門家による無料診断を活用し、まずは「見直しの余地がどこにあるか」を把握することから始めるのじゃ。